日記

今日は池島に行った。ずっと行きたかったところだったけど、島に行くのは遠いイメージがあって行くのを渋っていた。過去にGoogleアースで何回か散策をして満足していたけど、実際に歩いて目で見てみたいと思った。案外港もそんなに遠くないことを知って、もう仕事が始まったらなかなかいけないだろうと思って今日こそ行かなければと思って急に行くことにした。

池島までは船で約30分くらいで着く。私以外に大学院の賢そうな方?とか外国から来た人がいて一人で来ていたのは私だけだった。船から見える海はとても広くて、まだ先にいい景色がたくさんあるからと思ってカメラで撮るのをやめようとしたけど船に乗るのは楽しくて海も綺麗で何枚も写真を撮ってしまった。30分は本当にあっという間だった。

着いてすぐ見えるのは炭坑の跡だった。錆びて生き物のように見えた。散策を始める。まず見えるのは団地で人が住んでいるところもあった。それでもほとんどの部屋は誰も住んでおらず、中は何もなく廃墟になっていた。カレンダーが見えたけど平成6年で止まっていた。炭鉱後の金属の塊に目を惹かれる。どの角度から見てもカッコよかった。島には団地の他にも一軒家もあったけれど誰も住んでいなくてほとんどが崩壊していた。歩いていて破片が落ちてこないか心配だった。歩いていると本当にどこからでも海が見えてここは孤島なんだと気付かされる。人が住んでいる様子を想像したりしていた。まだここは(一軒家のあるところ)なぜか人のいる気配がした。

そのまま進んでいくと団地の住宅跡の群が見えてきて、本当に異様な雰囲気だった。この島の中で一番怖いと感じた。まずその棟の多さに驚いた。かつてこんなに人が住んでいたのかと思うと不思議でその様子をあまり想像できなかった。団地はほぼ全ての建物に蔦が巻き付いていた。棟全体が緑に覆われているのもあれば枯れた蔦が人の髪の毛のように巻き付いているのもあった。窓ガラスは割れていた。ここだけが日が当たっていてもどこか暗かった。歩いても歩いても棟は続いていた。人がいないのに建物だけがたくさんあって、不思議な感じがした。その中で食堂のようなものがあって、もうすぐ閉店するようだけれど道を尋ねると優しく教えてくださって安心した。

小学校もあった。まだ池島には子供たちもいるらしいのを昨日知った。ここで育つということがよく分からなくてどうなるんだろうと思った。廃墟の島で幼少期を過ごすこと...。(もちろん船があるからここだけではないだろうけど)小学校の奥に入って行けるところがあって、そのまま山に繋がっていた。山を登ると島全体を見渡すことができた。海も穏やかでトンビが飛んでいるのが見えた。こんな高いところから海を見下ろすことは久々だった。

案外島は小さかった。ぐるっと網羅するように歩いていても3時間しか経っていなかった。足は疲れていたのにあまりにいろんなものに度々驚いたりしていたのか全然気にならなかった。歩いていて、ここにまだ住んでいる人の生活を想像したり、自分がまるで夢の中にいる妄想とかをしたりしていた。

そういえば軍艦島に行った時はほとんどが制限された中での見学だった。世界遺産に登録されていることもあるけど、表面だけしか見ることができずあまり楽しめなかった。池島はそういう点で言えば島の中を自由に散策できるのはすごいと思う。立ち入り禁止のところはあったけどほとんどが自由に歩いていい場所だった。団地の中はとてもじゃないけど入れなかった。(当たり前だけど鍵がかかっていた)解体されることはないのだろうかと思った。まだ比較的綺麗な状態だったけれどガラスの破片が落ちていたりして、管理はされているところもあるだろうけどここまで管理するのは難しそう。何十年後には島ごと立ち入り禁止になることもあり得るかもしれないと思う。でもまだここに人が住んでいる限りはないと思うけど。

島の中は猫がたくさんいた。ほとんどの猫は人のいる場所にいる感じだった。痩せ細った猫もいたけど餌を与えられてるみたいで元気にしていたのは安心した。何枚か建物を撮ろうとすると猫が写ったりした。絵になっていた。

帰りの船の20分前に切符を買うために早めに元の港へ戻った。そこに俯いた女の子、私と同じぐらいの歳の子がいて、切符を買うときにその売ってる女性と隣にいたおじさんが、その子の話を私にしてきた。仕事をしてないんだってとか障害を持ってるんだってとか、多分おじいちゃんに何も言わず元の家族のいる実家に戻ろうとしてるとか言ってきて正直戸惑ったけど、あの子は多分島の子じゃなくて観光客の子の方が話してくれるけん、話しかけてみてと言われて、あはい、とその時も正直戸惑っていたけど、なんとなく気になってしまって話しかけてしまった。怪しまれるかもしれないと思ったけど、話を聞いてくれてとても優しい子だった。いろんな質問をした。出身は群馬県で子供の頃にこっちに引っ越してきたらしかった。今から買い物に行くと言っていた。島は子供の頃小中含めて8人しかいなかったらしい。島のことは好きなの?と聞いたら、不便だけど生まれ育ったところだから大切にしたいと言っていた。どんなところが好きなのかと質問すると、写真を撮るのが好きで、写真を撮ってる時かなと教えてくれた。朝や夜、夕方のあの感じがいいんだと。そこで生まれ育ったらどんなふうに見えるのだろうと想像してみた。ぜひまた今度写真を送ってよと私は行った。その子はまた電話とかしてもいいかな?と言ってくれた。コンビニで買った後にばいばいした。

全部が夢のように感じた。あの切符売り場のおじさんと女性の方も不思議だったし島の住人みんなが不思議な空気を纏っていた。(帰りの船で港から手を振ってくれていて窓の中から振り返したのを思い出した)時間の流れも少し違っていた。電波も届かないところだったし、ずっと携帯も触らずカメラだけを持ち歩いていてとても心地よかった。何もかもから離れている感覚がした。現実かどうかもあやふやだった。ずっと夢見たいな風景が続いていたから、今も夢の中にいるみたいで、でも帰りの車の中でどんどん現実の感覚は戻ってきて少し残念だった。また来ようと思った。来るときはその子に連絡をしてまた会えるといいなと思った。